2018年3月27日火曜日

民法854条

(財産の目録の作成前の権限)
第八百五十四条 後見人は、財産の目録の作成を終わるまでは、急迫の必要がある行為のみをする権限を有する。ただし、これをもって善意の第三者に対抗することができない。
上記のとおり、民法854条は、最初の財産目録の作成が終わるまでは、成年後見人は、「急迫の必要がある行為」のみをする権限を有すると定めています。

ある被後見人の方の成年後見人に就任した時、多額の負債がありました。
負債の金額は、預金残高の8割くらいでした。
金額的にも、資産に対する割合的にも大きい金額です。
そのほとんどは、被後見人の方が滞納していた家賃でした。
半年分以上滞納していました。
被後見人の方が倒れて家賃が支払えなくなり、半年以上滞納が続きました。
家主さんもよく我慢してくれたと思います。
私としては、この家賃を一刻も早く支払いたいと思いました。
なぜなら、賃貸借契約を解除されるおそれがあるからです。
「急迫の必要がある行為」といえそうです。
しかし、半年も待ってくれたので、財産目録を作成するまでの1か月程度なら、おそらく家主さんも待ってくれそうです。
この場合、「急迫の必要がある行為」ではないと判断して、財産目録を作成した「後」で、支払ったほうがいいのでしょうか。

そこで、賃貸借契約を解除されるおそれがあるので、財産目録を作成する前に、滞納している家賃を払っていいですかと、確認の意味も込めて家裁に上申書を提出してみました。
後日、家裁の書記官の方から、払っていいという回答が電話でありました。
というか、上申書をしたためるまでもなく、成年後見人の権限内の行為だから、当然に払っていいということでした。
家賃以外の負債も払っていいみたいです。
ちょっと悔しかったので、民法854条についても指摘したのですが、「それは権限外の行為をするときのことだから」といったような回答でした。←私はこの回答は厳密には誤りだと思うのですが、要するに、負債の支払いは成年後見業務そのものだし、支払える預金もあるのだから、支払ってよい、この程度のことで上申書いらない、ということだと理解しました。

とりあえず、負債は払ってもいいみたいです。
ただし、実際に不安に感じるようなケースに遭遇したときは、家裁に相談して進めてください。
今回のケースは、金額は多額でしたが、偏波弁済となるおそれもなく、その後の生活にも支障がないケースでした。

以上、個人を特定できないように、一部創作して記載しております